はげたペディキュアの話

昔、好きだった彼と別れて数か月たったとき。

お風呂でふと、足元をみると

親指に、少し剥げて荒れたペディキュアが残っていた。

彼に会うときに塗った色のままだった。

そのとき、

なんだか、すごく昔の夢物語のように感じていた

彼との過ごした時間が

夢じゃなくて本物だったことが思い出され嬉しかった。

同時に、まだ、数か月しかたっていないことに自分でも驚いた。

きたないから、すぐに落とせばよかったのに

あえて、そのままにしてみた。

意外とそのペディキュアは執念無深く

冬が過ぎてても、荒れたすがたになっても

まだ、へばりついていた。

それでも、私は落とすことができなかった。

結局、もう、ちゃんと足元をきれいにしなればならない季節まで

最後の三日月のようにになりながらもそこに居続けた。

そのとき、満月が新月になるのを待つかのごとく

パチンと最後の三日月を切ることができた。